日本一のわさびの里「筏場のわさび田」/狩野川台風の記憶「筏場の大崩壊」（伊豆市）

伊豆市のわさび栽培は延享2年（1745年）頃から始まり、現在は約350軒の農家により75ヘクタールで栽培され、品質、栽培面積、生産量とも全国一を誇ります。

特に、天城山の北麓、大見川の上流部（筏場川上流）に位置する筏場（いかだば）のわさび田は、総面積14.7ヘクタール、1500枚のわさび田の棚田を有し、伊豆市でも最大級です。

わさび栽培の適地は、冬暖かく夏涼しく、気温の変化が穏やかで、年間を通して水温が13℃～15℃前後の豊富な清水が湧き出る所だそうです。
しかも、水の量や流れの強弱が一定でなくてはならず、夏の強い日差しを遮る落葉樹がないと育ちません。

その難しい条件を満たしているのが、伊豆の天城山麓なんですね。

わさび田と清らかな湧水が作り出す「筏場のわさび田」の景観は、日本の美しいむら景観コンテストや静岡県棚田10選で入選しており、一見の価値があります。

「筏場のわさび田」 水之入橋付近の風景

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筏場のわさび田には、NHKの「にっぽん縦断こころ旅」（2015年4月24日放送）で俳優の火野正平さんが訪れたのが記憶に新しいところです。（その後、再放映もしてますし）

放映後、訪れる人がこころなしか増えたような気がします (#^.^#)

行き方は、国道136号線から修善寺橋を渡って県道12号線に入り、八幡東の交差点を右折して県道59号線をひたすら進みます。

県道59号線には、道沿いにわさび屋さんが点在し、わさび栽培の本場に来たことを感じさせます。

わさび屋 三角屋商店さん。



貴僧坊水神社のあたりに来れば、道沿いにわさび田を見られるようになってきます。

神社の境内にもわさび田がありますよ (^_^)



伊豆市には「筏場のわさび田」の他、大見川の支流である地蔵堂川上流にも、総面積14ヘクタールという大産地があります。
冷川、菅引川、吉奈川、本谷川上流などにもわさび田が作られています。

さらに進むと、眼下にこんな素晴らしい光景が＼(^o^)／


わさび田の中に、たくさんの木が植えてあります。
勝手に生えているんじゃありませんよ。
これはハンノキで、わさびに陽が当たりすぎないよう、日除けの役目をしているのだそうです。


こんもりした山道に入ると、左側前方に「日本一のわさびの里－中伊豆」 の白い説明板が見えてきます。
こちらで、伊豆市最大の筏場のわさび田を間近に見ることができます。

説明板の前に2、3台駐車できるスペースがあります。
車を降りてゆっくり散策してみましょう♪


※クリックすると拡大します。

伊豆市のわさび栽培は、延享2年（1745年）頃、上狩野村（現在は伊豆市湯ヶ島）の板垣勘四郎というかたが、静岡の有東木（うとうぎ）村から苗を譲り受け、天城山岩尾に植えたのが始まりと伝えられています。

栽培方式は、畳石式が主流とのことです。
地盤を深く掘り下げ、大きな石から小さな石に順に敷き詰めてたたみあげ、表層に砂を15センチくらい敷き詰めてわさびを植えます。




総面積が14.7ヘクタールというと、東京ドーム3個分が収まるくらいの広さだそうです (＠_＠)
そういわれると、いかに規模が大きいか実感が湧きます～。

説明板近くの小嵐（こあらし）橋



小嵐橋の周辺の風景ですよ～ ヽ(´▽｀)/

日除けのシートの下はわさび田です。







このわさび田の水は、天城山に降った雨水が噴火堆積物である軽石の層をぬけてわさび田周辺に湧き出たものだそうです。

綺麗なうえ、その水量が豊富なことに驚かされます。






わさびは1つ1つ底のない筒に入れて植えられています。
真っ直ぐな地下茎に育てるためなんでしょうね。






さて、ここで満足してはいけません。

さらに300メートルほど奥に進んだ水之入橋周辺の風景がまた良いんです♪
水之入橋の手前にも、数台駐車できるスペースがありますよ。

水之入橋



この風景もぜひ見ましょうね (o^^o)♪

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筏場のわさび田に向かう途中、道路端に「筏場の大崩壊」という大きな説明板があるのに気が付きます。


※クリックすると拡大します。

昭和33年9月26日、伊豆半島に最接近した狩野川台風は、半島中央部を流れる狩野川上流域一帯に、時間雨量80-120mmという未曾有の豪雨をもたらしました。

台風による狩野川流域の被害は大きく、氾濫した面積は3,000ha、死者・行方不明者は853名にも達したとのことです。
（静岡県全体の死者行方不明者は1,046名）

「筏場の大崩壊」は、その狩野川台風による鉄砲水で引き起こされました。
激しい水の勢いは、筏場の蛇喰山（じゃばみやま）を2つに分断し、崩れた土砂や倒れた木々は土石流となって下流に流れ、大きな被害をもたらしました。

鉄砲水の上流側、大見川（筏場川）沿いから見た蛇喰山。
※大見川は狩野川の支流です。

※クリックすると拡大します。

鉄砲水の下流側、冷小川から見た蛇喰山。


※クリックすると拡大します。

車と比較すると、崩壊の大きさがわかります。

「狩野川台風50年目の検証」 国土交通省 沼津河川国道事務所より


氾濫した大見川（筏場川）の水は、蛇喰山を破壊して通り抜け、下の蛇喰川（じゃばみがわ）にまで達しました。

蛇喰山一帯は、軽石質火山灰の堆積土で覆われており、非常に崩れやすい特性を持っているそうです。
いかに脆弱な地質でも、山を割るほどの鉄砲水の破壊力、恐ろしいことです (>_<)




「昭和33年伊豆水害の山地の崩壊 土石流出とその防止対策」より


本来、説明板の背後に「筏場の大崩壊」の現場が見えるはずだと思います。
木が生い茂り、はっきり見ることができない状態でした、ちょっと残念… (^_^;)

たぶん、赤丸のあたりですm(_ _)m

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狩野川台風の襲来により、筏場のわさび田も壊滅の憂き目に遭いました。
しかし見事復興を遂げ、「日本一のわさびの里」といわれるまでになりました。

春先（3～4月）になるとわさびは白く小さな花をつけます。
一面のわさび田に咲くわさびの花は、春の訪れを告げてくれます。
その頃、訪れるのも良いですね。

わさびといえば、根茎を摺りおろして刺し身、寿司などに添えたり、山葵漬けとしてご飯と一緒に味わうのが一般的ですね。

実は、わさびの花も、天ぷらやおひたし、醤油漬けなどにして美味しく食べることができます。
その時期にしか食べられない春の珍味として、おすすめですよ。





名称：
　筏場（いかだば）のわさび田
所在地：
　静岡県伊豆市筏場
問合せ：
　伊豆市観光協会中伊豆支部　
　0558-83-2636
　http://www.oominosato.com/　
アクセス：
（交通機関）
　伊豆箱根鉄道 修善寺駅より
　伊豆箱根鉄道バス 筏場新田行で約35分
（車）
　修善寺から県道12号線を伊東に向かって約20分
　伊東から県道12号線を修善寺に向かって約30分



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